【楽曲分析】「明け星」に秘められた緻密な作曲技術【LiSA】

楽曲分析

日本の映画の興行収入歴代1位を樹立した伝説の映画のアニメ版「鬼滅の刃 無限列車編」
今回はそのOPテーマであるLiSAさんの「明け星」の楽曲分析をしていきたいと思います。
楽曲はこちら

イントロ

フィルターでわざと音を濁し、ミニマムな音像からパッと明瞭な音質、壮大な音像に切り替わるという音響的なテクニック使う事によって、たった4小節のイントロで一気にリスナーの心を鷲掴みにしてます。

Aメロ

イントロからの流れで、そのままCmのギターリフ1本でカッコ良く曲が始まります。

バンド楽器で重たくリズムを刻み、おどろおどろしい歌の隙間(休符)に、すかさずストリングスを入れる事でコードが一定でも飽きないような工夫がされておりますね!
歌とバンド楽器だけだと恐らく飽きられてしまうようなセクションでも合間に耳を引くギミックがある所に編曲者としての腕の良さが垣間見えます…。

ポップスの場合はAメロやBメロなどの各セクションは偶数(主に4の倍数)小節数であることが一般的ですが、この曲はAメロが7小節でちょっと変わった曲構成感ですね。
ずっとCmで刻んでいたコードが最後の7小節目で動き出し、楽曲が展開していくことを考えると、6小節+1小節という解釈でしょうか…。いずれにしてもあまり一般的ではないですが違和感は全くない!

Bメロ

コード進行的には前半4小節はダイアトニックコードで普通に進行していますが、5小節目で並行短調(Key Cm)のドミナントであるGが出てきているので、ここだけめちゃくちゃ暗くなります。
しかしその後メジャーキーのドミナントであるB♭が出てくることで、一筋の光が刺すような雰囲気になりますね!
ちなみに、このB♭をきっかけとしてサビでは転調しています。

普通の人だと恐らく、AメロはずっとCm一発でBメロから動き出すようなコード進行を設定しがちだと思うのですが、前述したAメロの7小節目でコード動かすことによって、Aメロ〜Bメロのセクションの繋がりがすごくスムーズですね。

コードもサブドミナントとドミナントしか出てこなくトニックに落ち着かせないあたり「ここから曲が進行していくぞ!」という明確な意思を感じます。

Bメロも6小節しかない上に最後の小節は2/4拍子と通常の半分になっているのでより短く感じます。これも結構変わった曲構成ですね。
4小節+1小節+α的な解釈でしょうか。Bメロというよりは洋楽のブリッジ(Bridge)に近い感じだと考えると割としっくりくるかもしれません。

この曲テンポがBPM95と比較的ゆったりしているので、気をつけないとタルくなっちゃいそうですがこのように通常の曲構成よりも短くすることで間延びするのを回避しています。
それでいて、短すぎないのでしっかりと展開感もあるという絶妙なバランスで成り立っております!

また、歌メロからはAメロの2、6小節目Bメロの2、4小節が、同じメロディになっている=モチーフを展開させているところに作曲者である梶浦さんのクラシカルな素養を感じ取れます。

サビ

Key G♭に転調します。
元がKey E♭なので関係性的には同主調(Key E♭m)平行調(Key G♭)となります。
こうした短三度関係の調(キー)は楽典の教科書的には近親調に定義されていないのですが、実質近親調なので繋がりの相性が良くとてもスムーズに転調がしやすいです。ポップスの世界ではよくある転調のテクニックです。

転調のきっかけであるBメロの最後のB♭は
Key E♭ではV
Key G♭ではIII(並行短調のV)
なので転調前後のキーに共通したピボットコードとなっています。

コード進行を見ていくと色んなテクニックが散りばめられているので1つずつ見ていきましょう。

まず最初はVIm→V/VII→Iという進行。
ルート(ベース)を見てみると1音ずつ上降していっているのがわかるかと思います。
今までずっと暗かった中、ここでようやく明るい希望が感じられるようなストーリーをコード進行を通じて表していると考えられます。

前のコード進行からIIIまでずっと上がって来ているのがわかるかと思います。
ダイアトニックコードで進行するのであればIIImが正しいですが、ここではIIIになっております。
これは並行短調(E♭m)のドミナントコードで、先ほど記載した通りめちゃくちゃ暗いコードなのですが、明るい進行の流れで一瞬暗いコードが出ると切なさが増すのです
(「どうしても指して動かないから〜」の“動か”のあたり)

今度は前半4小節とは逆でルート(ベース)が順次下降して切なさを演出しています。
6小節目内で細かく1音ずつ下がっていくのがより切ない…。
厳密には違いますが、ベースだけが動いているのがクリシェみたいですね。

ベースの下降してたどり着いた先がC♭で、その後はIIm→IIIとまたちょっと上がります。
順次上がったり下がったりでまるで炭治郎の心情を表しているかのようです…。

2回し目は順次降じゃないのか…!
恐らく、V→Iは一番わかりやすい明るさの演出方法なので、サビも後半に差し掛かりより明るい希望感を演出したかったのでしょう。
ちなみに、IIm→V→I→VImは循環進行と言ってスタンダードなコード進行の1つです。
ここにきてオーソドックスなコード進行を持って来ているのも粋ですね!

#IVm7(♭5)はIの代理コードです。
ルート(ベース)を順次下降させる感じはそのままにしたかったのでしょう。また、次のコードとルートが4度関係なのでスムーズな進行になっています。
VIIm7(♭5)→IIIもまた4度関係で、しかもマイナーキーのII→Vとなっています。ただ行き着く先はIV…!
ここでVImに行ってしまうとものすごく暗くなってしまうので、あえてIVに進むことで暗さを緩和しています。しかも、IVはサブドミナントなので終始感が薄く、まだ物語は続いていくんだということを示唆しているかのようですね…!

アニメはC♭の部分で終わるのですが、フルサイズの場合は元のキーに戻ってこないといけないので、最後の1小節ちょっとで元のキーであるE♭(Cm)に戻ってこれるようなコード進行になっております。

Key E♭から見ると、
A♭mはIVm(サブドミナントマイナー)
B♭はV
なので、前後で共通で使えるコードのため滑らかに元のキーに戻って来れます!

イントロへ

元のキーであるE♭(Cm)に戻ってきます。
前述したコード進行のおかげで何も違和感なく戻って来れています。
短三度関係のキーは転調しやすい理由がこれでなんとなくお分かりになるのではないでしょうか。

2A

1番とほぼ同じ。

間奏

2番のBメロに行くと思いきや間奏へ突入してしまいました。
壮大なストリングスの見せ場のパートです。

Dメロ

ここで新しいDメロのセクション…!
コード進行はAメロと同じです。

メロディではラが半音上がっており、Cのドリアンスケールを使っております。
ちょっと妖艶な雰囲気が出ていますよね。

間奏2

ギターソロと合わせてAメロの歌の一部がコーラス的な使われ方で出現します。
こういった、以前に出ていたメロディ(フレーズ)を別セクションで使うというやり方もクラシックでよくやる技法です

2B

ここでBメロが出てくるんですね…!
Aメロ→Bメロと来たい定型的な流れを崩してA→間奏→Dメロ→ソロ→Bメロとするポップスではあまりない曲構成のあたりに梶浦さんの個性が出ております。
通常の2コーラスの曲構成は聞き飽きたと言わんばかりんの複雑な曲構成、、個人的には大好きです!
(※ちなみに、1Bとはコード進行と小節数が変わっていますが、メロディとアレンジがほぼ同じなのでBメロと解釈しております)

2B1Bよりも2小節伸びているのも展開のミソになっています。
遊び心満載というかなんという緻密なアレンジなのでしょう…、これだけやっていても曲として成立させているあたりに梶浦さんの実力が伺えます。

ラスサビ

1サビとほぼ同じですが終わり方だけエンディングに向かうためちょっと違っています。また2/4拍子が出てきていますね。
最後の歌の伸ばしで終わらせずに、次のアウトロと被せてることで勢いをストップせずにラストまで向かっています。

アウトロ

アウトロのコードはCmではなくE♭で少し明るさや希望を感じます。

エンディング

サビ頭をリタルダンド(だんだん遅く)しながら終幕へ向かっています。
この常に一定じゃないテンポで展開するのも劇伴作家さんらしい手法ですね。
そもそも、これどうやって歌とオケ合わせたんでしょうか…。同時にレコーディングして合わせたとしか思えないほど息ぴったりです…!
別録りだとしたら合わせた方の技術力の高さに驚きです…。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
作詞・作曲・編曲すべてを手掛けている梶浦由記さんのアドバンスドな音楽の技術がギュッと濃縮されているような楽曲でした。

梶浦さんは元々劇伴作家さんなので楽曲でストーリーを構築するという技術にものすごく長けているような印象をこの曲から感じ取れました。劇伴もできて歌モノも書けて大変素晴らしい作曲家さんです。

過去に劇場版の主題歌「炎」の楽曲分析も行っているのでもし良ければそちらも読んでくれると嬉しいです!

この記事が良いと思ったらコメント、シェアしていただけると嬉しいです!

おしまい。

コメント

  1. より:

    授業で楽曲分析をしているので、とても助かります。
    フルサイズも楽しみにしています。

タイトルとURLをコピーしました